だから、恋なんて。

相手が幸せであればあるほど、自分への可能性はゼロに等しくなっていくのだから。

先輩が雫に思わせぶりな態度をとるわけでも、それこそキスをしたわけでもない。

そんな相手を一途に思い続けることなんてできるわけない、きっと雫は新しい恋を見つけて先輩のことを忘れるはず。

本当に心の底からそう願っていた。

それなのに…。

「先輩、結婚して十年なんだって…。そう思ったら、私って十年以上前に進めてないんだなぁって。なんか…新しい恋の始め方なんてもうわかりませんよ」

俯いていた顔を上げて、弱弱しく笑う雫。その顔は諦めているようで、とても疲れて見える。

言葉を無くしている私たちに向かって、雫が目の前で手を振りながら焼酎の注がれているグラスをあおる。

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