だから、恋なんて。

「はぁ~、ごめんなさい!最初から暗い話題で、辛気臭くしちゃいましたね」

無理に笑ってるのは痛いほど伝わってくるけど、この居酒屋でこのままの空気でいるのも雫が余計に気を遣うのがわかっているから。

「うん、オッケー。…今日は飲も、飲も!」

「そうだね、今日はとことん付き合う!」

そういってまた乾杯する。

雫もきっとこの悩みに簡単な解決法だとか、明確な結論だとかを見つけられないのがわかってるから、ここで、この場だから少しだけ吐き出したんだと思う。

もしこれが私の家で二人きりでおまけにお酒なしで話してたら、どうしても答えを見つけたくて堂々巡りの話に陥ってた可能性だって無きにしも非ず。

千鶴だってそんな雫にどうにかして新しい恋を、と思ってこの間のギャルソンのようによさそうな人がいれば紹介してるんだろうし。

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