だから、恋なんて。

榊のことはわからない千鶴は黙って食事を再開してたけど、Sのくだりで途端に会話に入ってくる。

「そりゃそうだわ。雫は究極のМだもんね~」

「究極とか、そこまでいってませんよ」

「いーや、あんたは真性だね」

「そんなことに真性も仮性もないです!」

雫、残念だけど、十年以上も片想いでいられるアンタは立派なМだと思うよ、とは口に出さずに少し冷めてしまったチヂミを口に運ぶ。

「それで?その榊さんって子はICUの子なんでしょ?そんなにSっ気たっぷりなの?」

楽しそうに私に矛先を向けてくる千鶴は、こういう類の話になるとテンションが上がってお酒も進んでいる。

「榊がSって…そんなの考えたこともないからわかんないよ」

このまま下ネタに突入しちゃったらとんでもないと、話を流そうとするけど。

「美咲さんМだからなぁ~。案外榊さんに弄られてたりするんじゃないです?」

急ピッチで焼酎を飲んでいる雫にまでそれを阻まれる。

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