だから、恋なんて。

「今度食事でもどう?」とか「今度飲みに行こうよ」ならまだましでも、「今度は俺とどう?」なんて言ってくる最悪な奴もいた。

どうやら勝手に『簡単に落ちるオンナ』とでもレッテルを貼られた私に、その後も普通に恋愛できるわけはなく。

恋心が芽生えるたびに、相手を疑う気持ちと自分の保守的な気持ちが、その芽をあっさり摘み取ってしまうだけでなく、まだ恋とも呼べないくらいの気持ちも、そうそう生まれない。

風の便りでそのドクターもどこかの令嬢と結婚したと聞いて、段々と誘ってくるドクターもいなくなったのがここ数年。

それは噂がみんなの中からなくなったからというよりは、もうアラフォーの女に手を出して本気になられたら面倒だということのような気がする。

それでも、そうやってドクターを疑って選別している間に、恋をするという純粋な気持ちも忘れてしまったんだと思う。

会いたくて、でもドキドキして…声だけでも聴きたくて、でも触れたくて…なんて気持ちは、もう長い間感じていない。

辛い恋をしている雫と、そんな気持ちを味わうこともない私と、どちらが幸せなんだろうか。

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