だから、恋なんて。
あれ、聞こえなかったかな?
…なんて考えても見るけれど、こんな静かな空間でそんなことあるはずないよね。
どうしていいかわからずに、恐る恐る青見先生のほうを見る。
「…え」
パソコン画面を見ながら操作していたはずの先生は、デスクに片肘をつき、そこに怪しげな笑みを浮かべた端正な顔をのせている。
しかも、視線は私にむけられたままでだ。
合ってしまった視線を外すことができずに、静かなICUで見つめ合う。
さっきは居心地が悪くないと思ったはずなのに、ものの数分で雰囲気は変わり、またしても心臓が妙な音をたて始める。
規則的に聞こえてくる心電図モニターの心拍数よりもはるかに私のほうが多いに違いない。
「あの…」
とりあえず言葉を発してみるけど。
なんとも気まずくてじっとりと掌が湿ってくるのを感じる。