だから、恋なんて。
今、彼女、いないって言わなかった?
じゃあ、この間見た人は彼女じゃなかったってこと?
まるで映画のワンシーンだと思ったあの日の青見先生とモデルのような彼女を思い出す。
彼女の肩に腕をまわして引き寄せながら耳元で囁く。
危うくバカップルとでもなりそうなものを、美男美女だから許されてたわけで。
あれを彼女と言わずして何と言うのか。
それとも、お互い酔っ払っていて、友達だけど親密に見えたのか。
または、友達以上恋人未満って感じとか。
あるいは、あれは私の見間違いで、青見先生じゃないよく似た人だったとか。
……というか、あの場面で青見先生が正直に答えなきゃいけない理由は何もなくて。
プライベートと仕事をきっちりわけていそうな先生だから、わざわざ職場のスタッフに『彼女います』って公言することもない。
そんなことを考えながらソファに横になっていても、もちろん睡魔なんて襲ってくるわけではなく。