だから、恋なんて。
「お疲れ様です~、お願いします」
師長に手を振られながら見送られ、ところどころで他のスタッフからも「お疲れ様です」と声があがる。
なんとか気力を振り絞って休憩室から鞄を持って、病院の裏口方向にある更衣室まで疲れ果てた体を引きずるように歩く。
更衣室までの廊下は正面にある受付や外来棟とは違って、うっかり迷い込んだ人しか一般の人はいない。
ほとんどがうちの職員で、たまに見かける外部の人も病院に出入りする業者さんや製薬会社の人ばかりで。
少し気を抜いていても、患者さんに大あくびを見られる心配もない。
鞄の中から少しだけ残った紅茶を取り出して、歩きながら飲み干す。
口の中でその渋みを感じながら、帰り道でも喉が渇きそうだからもう一本買おうかなと考えながら飲み込もうとした瞬間。