だから、恋なんて。
ジンジンとなかなか治まらない後頭部の痛みに、なにか文句を言ってやろうと思うけれど、如何せん名前がわからないのだから、そう強くもでられない。
だって相手は一看護師である私のフルネームを知っていたんだし。
「…先生、外来とかはいいんですか?こんなところでブラブラしている時間なんてないんじゃな」
「美咲さんに会えないかな~って思ってたら、ほんとに会えて吃驚したよ。まさに運命かと思ったもんなぁ」
はい…?意味不明な言葉に、夜勤明けの疲れた頭じゃついていけずに、返す言葉も見つからない。
言葉を遮られたことに腹も立つけれど、それ以上にコイツに関わらないほうがいいような気がして、曖昧な笑みをなんとか浮かべる。
まさに運命って何?私に会いたいってどーゆーこと?っていうか、美咲さんって、なんで初めて話すような奴に名前で呼ばれなきゃいけないの?それに、大前提としてコイツ絶対私より年下なのに、なんでタメ口!?
あ~、無理無理。
もう頭では全然考えられない。この人おかしいわ、きっと。
うん、医者になっちゃったけど、性格に難アリって人もたくさんいるし。