イナズマ
俺は、踊っている人ごみをかき分けて、その女の元へ歩いていく。


踊りながら、俺の存在に気付いた女は、挑発的な目をして、一緒に踊る。

クラブの中は、薄暗いがはっきり分かるほどの、濃いメークをしていた。


そして、女は歯を見せずに、にっこり笑って俺を見る。


歯を見せずに笑うところが、大人の女の笑い方で、俺はぞくぞくする。


俺は、声をかける。


「向こうで、話しをしませんか?」


音楽が大音量で流れているから、よく聞こえないみたいだ。


踊るのを止めようとはせず、俺の口元に、耳を近づける。

俺は、敢えて何も言わずに、目だけで誘う。



自分でも知っている。
俺が女を誘う武器は、この顔。
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