Heaven
…声は、分娩室の方から聞こえた。

可愛らしい、赤子の笑い声。

母親にあやされてはしゃぐような、聞けば誰もが微笑ましく思うような笑い声。

だが夜更けの廃病院にあって、その声は不自然且つ異様な現象のように感じられる。

手にした一冊の本を握り締め、カタリナは声のする方へ歩く。

分娩室の表札がある一室に近づいた時だった。

「誰でしか?」

幼い声が闇夜に響いた。

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