Heaven
「誰でしか?」

もう一度訊ねる。

紛れもなく赤ん坊の声。

依頼の話から考えるに、『その赤ん坊』は生後一ヶ月程度の筈。

まだ言語を発するには些か早過ぎる。

警戒しつつ、赤ん坊の顔を見ようとしたカタリナは。

「っ!」

咄嗟に視線を逸らした。

大きく見開き、真逆に向いた左右の瞳孔。

その瞳に『呪い』らしき力を感じ、直視する事を避けたのだ。

一瞬見ただけで、カタリナの精神を『死』が汚染しかける。

カトリックの宗教防壁を備えるカタリナだからこそ、この程度で済んだのだ。

普通の人間ならば視線を合わせただけで発狂しているだろう。

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