Heaven

「あうっ！」

摑まれた瞬間に、カタリナの修道服に血が滲んだ。

食い込む指先。

常軌を逸した握力。

小さな紅葉のような手に蒼白い血管が無数に浮かび上がり、柔肌を毟り取るような怪力で肉を、骨までも握り締める。

その目的は、右腕そのもの。

己と同じように。

自らの長い右腕と同じように、カタリナの腕も長く引き伸ばそうとする。

自分と同じ『普通の姿』にしようとする。

食い込んだ指先が、痛覚神経を直接刺激する。

袖の中を伝って滴り落ちる赤い血。

それに構う事なく。

「神の教えを忠実に実行するべく」

カタリナは痛みに耐えつつ、左手に携えた本を掲げる。

「毒を以って神敵たる毒を制す」