Heaven
「ぼくとおんなじ匂いがすりゅ」

赤ん坊はアル・アジフを評してそんな事を言う。

確かにそうかもしれない。

アル・アジフは神聖さとはかけ離れた魔道書の原典。

本来魔道の技術とは毒…しかも猛毒であり、素人が目を通すと脳を汚染されて発狂もしくは廃人となる。

それは悪魔に対しても同じ事。

先にカタリナが述べた『毒を以って毒を制す』の一節の通り、アル・アジフは聖職者が持つに相応しくない原書であり、シスターで祓魔師でありながら、その原書ゆえにカタリナはヴァチカンでも異端として忌み嫌われていた。

それでも。

「全ては神の教えを護る為に」

カタリナはアル・アジフの表紙を赤ん坊に見せ付けるようにして、一歩踏み出す。

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