春の桜は色鮮やかに=独眼竜の妻・愛姫=
三の間には、女中が控えていた。



愛姫が入ってくると、脂燭(小さな照明具)に火をつけていた女が、うやうやしくお辞儀をした。





「この度のご結婚、誠におめでとうございます」

「ありがとう。田村清顕が娘、愛にございます。これからよろしくね」

「私、この度待ち女房を仰せつかりました、りせと申します。よしなに」

「こちらこそ」




りせ、と名乗ったその女中は、女にしては長身の大柄な女中であった。

愛姫は、景綱と同じように視線を上に向けて話をしなければならないため、少し困惑した。



微笑を浮かべたりせに促され、愛姫は足を休める間もなく祝言の挙げられる部屋へと案内された。




ゆっくりと襖が開けられ、愛姫は深く座礼をしたまま、微動だにしない。

すると、何かがたんたんたんと音を立てて近づいてくる。




肩にぽんと置かれた手に思わず顔を上げると、そこには端正に整った顔の少年が、満面の笑みで愛姫を見つめていた。






「何をぼやっとしておるのだ。早くこっちに来いよ」
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