春の桜は色鮮やかに=独眼竜の妻・愛姫=
その後、景綱の仕切りにより儀式が進められた。


盃につぐための酒を政宗が一気飲みするわ、愛姫の雑煮を政宗が奪って全部食べるわと、およそ厳かとはいえないものではあったが。



一通りの儀式が終了すると、女中のりせがおもむろに愛姫の肩を叩いた。




「愛姫様、そろそろお召変えをなされませぬと」

「え、まだなにか儀式があるの」

「何を仰せになられるのです、床入りに決まっておりますでしょう」

「はっ、そうだった」




床入り、とはつまり初夜のことである。


もちろんそれは愛姫も知っていることで、政宗とのあんなことやこんなことを想像して一人で赤面していた。


りせは笑いながら「まあ、花嫁は誰しも経験することですから」と宥めて愛姫を別室に連れて行き、てきぱきと襦袢を着せた。



するとそこに、愛姫付きの女中・たきがやってきた。




「これはこれは。姫様もついに生娘をお辞めになられるようで」

「やめたくてやめるんじゃないのに」

「なんせ初夜でございますからね、さぞかし痛いでしょう」

「えっ」

「とはいっても、伊達殿がどれほどの手練れかにかかっていますから」

「・・・きかなければよかった」




からかうように話すたきに、愛姫はついムキになる。


しかしそれも、初夜への不安を紛らわすための強がりなのであって。



観念した愛姫は、足取りも重く寝所へと向かった。
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