春の桜は色鮮やかに=独眼竜の妻・愛姫=

語りあう

一瞬の沈黙を挟んで、政宗が口を開く。




「・・・愛姫とやら」

「はい」

「お前、田村に未練はないのか」

「ありますよ。あるに決まっているでしょう」

「では何故、此度の婚礼を引き受けたのだ」

「・・・では政宗様は、我が身と家のどちらが大切と思われますか」

「もちろん、家に決まっている」

「それはどうして」

「家が滅びれば、人も同じく塵と消えるだろう」

「そうです、そうですね。ならば私も、同じことでございますよ」

「そうか」

「ええ、そうです。田村を伊達から守るため、私はあなたに嫁ぎました。けれど、それはもう果たせそうにありませぬ」

「田村を見捨てるというのか」

「そうお考えになる人もあるでしょう。けれど、伊達の若君に嫁いだ今、私が守るべきものは、」

「ものは」






「あなたなのです。政宗様」
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