春の桜は色鮮やかに=独眼竜の妻・愛姫=
朝餉を終えた愛姫は、父の部屋に座り込んでいた。



突然父に呼び出され、愛姫は自分が何かやらかしたのではないかと心配になった。

心当たりはなくとも、無意識に人を怒らせる時だってある。


そわそわと着物の裾をいじったりしていると、父・清顕が足早に入ってきて、愛姫の正面上段に腰を下ろした。

すかさず愛姫も、片膝を立てた姿勢から正座に直り、軽く一礼した。


愛姫の視線が自分に向いたことを確認した清顕が、口を開く。




「愛姫、今日はお前にとって大切な話をしよう」

「はあ、」

「単刀直入に言えば、結婚についての話だ」

「・・・結婚、でございますか」

「そうだ」




父親の口から出た“結婚”という言葉に、愛姫は固まった。


まさか、縁談が持ちかけられたのではないかと思った。

そしてその予感は、見事に的中するのである。




「お前に、縁談話が来たのだ」

「お相手は、どこの殿方にあられるのです」

「・・・伊達だ」

「なんと」

「今、伊達は田村の敵方にある。あちらには佐竹や蘆名も付いていて、このままでは田村は窮地に陥るだろう」

「・・・・・」

「この危機を脱するためにも、愛。お前を、伊達に嫁がせたい」

「・・・縁談のことは、よく分かりました。しかし」

「なんだ」







「私にも思う所がございます故、少し時間をくださいませ」




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