-浅葱-新選組異聞
少年は幕末へ
竹刀の弾ける音が響く
まだ大人になりきれない体格をした少年達が道着を身に纏い、金切り声を上げて試合に熱を上げていた
上げる雄叫びは相対する者を威嚇し、威圧するもの
しかし、目の前の少年にそれは通用しない
小柄ではないが、どちらかと言えば華奢だ
けれど、静かにたたずんでいる立ち姿は目を見張る者がある
腰にかけられた名札には『七瀬』とある
全く隙の見受けられない七瀬を前に、湿度とは関係なく対戦相手の少年は汗が額を伝う
雄叫び1つ上げない七瀬に竦んでいるのだ
その事実に眉をひそめて奮起する
構えた竹刀の先を小刻みに揺らして相手の出方を伺うが、七瀬の思惑は読み取る事ができない
伝う汗が目尻にたまった所で、少年は耐え切れずに一歩踏み出した
「ハァァァァァア!!」
振りかぶった竹刀を素早く七瀬の頭上に振り下ろす
しかし、七瀬に一撃を加えることは出来なかった
どうアイツが動いたのかわからない
ただ、視界から七瀬は消えて
次の瞬間には自分の胴に七瀬の一撃が決まっていた
「胴あり!一本、七瀬」