-浅葱-新選組異聞
「おぉ!おまんら、ちょおまたんか」
止めるまもなく2人の少年は走り去っていく
あの少年達が持っていた光る棒が何なのか気になっていたのに
「梅太郎さん!桂先生がお待ちなんですよ」
低められた声に梅太郎は飄々と笑ってみせる
奇妙な格好をした少年のことはひとまず置いておこう
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「何なんだここ?」
「……あのさ」
荒い息を吐く御草は、不安と困惑を滲ませた顔を引きつった笑顔に歪めた
「タイムスリップ……とかだったりして……」
七瀬も困惑を深める
いつもなら馬鹿馬鹿しいと一蹴する言葉だか、あの時代錯誤な人々や町並を見た後では簡単に否定することは出来ない
2人が視線を交わした時、路地裏が騒がしくなる
「逃がすな!追え!」
無数の足跡が行き交う中、暗がりにいた2人の前に血に濡れた男が現れた
御草が向けた懐中電灯の灯りに照らされ、額から流れる血が目に入る
渋い色の着物が赤黒く濡れていた