-浅葱-新選組異聞



御草は七瀬をただ見つめていた


懐中電灯の灯りはどさくさ紛れに消えていた
降りしきる星明かりだけが彼らを浮かび上がらせる


七瀬の運動神経が異常に高いことは、幼なじみの御草にはわかっていた


けれど、こんな七瀬は知らない


男が構えた日本刀
それよりも短い小刀、いや、脇差だろうか
ソレを隙なく構えた七瀬はいつもと違う鋭い目をしていた


複数の足音が近づく
灯りをかざした男たちが現れる


そいつらが何か叫んだと同時に七瀬は動いた


焼き付く残像を御草は追っていた


「ハアアァァァァア!!」


それは獣の慟哭に似ていた



******



「ヤツは?」

「路地に逃げ込みました」

「手分けして追い詰めて下さい。暴れるようなら切り捨ててもかまいません」


それだけ冷たく言い捨てて彼は前を向く
たいして気にならない寒さだが早く寝床に帰りたい


「早く見つけて帰りたいのになぁ」


長い黒髪を1つに結あげた青年は困ったように呟く
腰には二本の刀を差して、羽織るのは浅葱色のダンダラ


一つ先の角を曲がったところで青年は不思議なものを見た




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