-浅葱-新選組異聞
その中でも異様に若い優男は返り血を頭からかぶった七瀬を見て微笑む
「初めて人を斬るとやっちゃうんですよね。まだ下手くそだ。でも切り口は見事」
どこか可笑しげに男は笑った
御草にはこの状況で微笑んでいられる事が異常なことに思える
「私は新選組、1番隊組長、沖田総司。君達は何物ですか?」
驚愕は緩やかにやってくる
武装した男たち
七瀬は遠くなる意識をそこで手放した
最後に泣きそうな御草の顔が映った
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ずっとずっと、自分が何を求めているかわからなかった
温く感じる日常
何をやっても熱くはなれなかったのに、刀を手にした時の高揚感が心地好かった
相対した男の本物の気迫
正真正銘の真剣勝負
ただ心が踊った
けれど、気持ちの良い微睡みに1つだけ引っ掛かりを覚えた
瞬けば、そこに御草夜嗣がいた
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「起きたか」
低い男の声がした
何度か瞬いて覚醒すると、見えたのは日本家屋の天井
「浅葱!」
「………夜嗣?」
「良かった……!」
温かい感触がする
御草が力一杯に七瀬を抱き締めていた