-浅葱-新選組異聞



怒っているわけではない


ただ、この感情をなんと呼べばよいのかわからないだけだ


そう……御草が言った言葉が近いかもしれない


七瀬は不満なのだ


この生温い日常が


色々なスポーツを今までやってきたがつまらない
それなりに楽しめる剣道が一番長く続いているが、最近は退屈だ

そう、それは全国大会で優勝してしまった辺りから色濃く感じている


何かが足りない……
その何かさえよくわかってはいないけれど………


つらつらとそんな事を考えながら歩いていると、あっと御草が言った


「浅葱、そういえば今日流星群が見れるらしいよ」

「流星群?」

「うん。見に行かない?」


屈託のない笑顔はいつもかわらない
剣道の稽古を終えて、日の暮れ始めた空を見上げて七瀬は頷いた


「わかった。じゃあ夜嗣、飯食ったら裏山な」

「やった!すぐ行くよ。いつもの場所でね」


2人の昔からの遊び場
その近くにある丘からは夜空がよく見えた


御草が弾んだ足取りで先を急ぐので、七瀬もそれに続いた





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