-浅葱-新選組異聞



「夜嗣……なんか変じゃないか?」

「へ?……あぁ、停電かな」


御草も身体を起こして首をかしげた
2人の視線の先、町がある方は住宅の光が見えなかった


山の輪郭と建物があるということは見て取れる
しかし、それ以外は夜の闇に閉ざされていた


「……とりあえず戻るか」

「……そうだね」


なんとも言えない違和感は拭えなかったが、懐中電灯をつけて家に戻った



******



七瀬と御草は声には出さず困惑していた


「ここ何処だろう……?」


不安を滲ませた御草の声に七瀬は慰めもいえない
七瀬自身も困惑していたからだ


2人は自宅を目指して歩き続けたが家はなかった
それどころか、2人の住んでいた町とも違うようだ


墨を塗りたくったような暗闇に不安は増していく
御草の懐中電灯は消させて今は七瀬の懐中電灯を使っている


2人同時に灯りを失う事をなくすためだ


明らかに見たことのない景色の町並みが見える
そして、それはやけに前時代的だ






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