空色ホイッスル
柚木先輩は唖然とした顔を浮かべながら、「嘘だろ……」と呟きその後に
「去年の1年間、アイツは自分のこと隠してたのか?」
と言っている。
他のベンチのみんなも柚木先輩の言葉にびっくりしている。
「柚木先輩、いったいどうしたんですか?」
私はスコアに不備がでないよう試合を見逃さないように気を付けながら先輩に問う。
「試合始まった途端、いつものフォワードの奴が見当たらなくて、
向こうのメンバー表に一ノ瀬圭馬って書いてあったからちょっと気になったんだよ」
「でもその一ノ瀬って奴ってすごくないっすか?
ディフェンダーからポジションチェンジしたわりにはフォワードの役割がしっかりしてる……」
その後もその一ノ瀬って人でベンチのみんなは持ちきりで私が会話に入るタイミングはなく、私は少し離れて試合を観ていた。