君の存在が笑顔になる
遼が座っていた席に千太郎が移動してきた。


「桜香?」


固まる顔の前で手を振る。


「別れてくれた…」


「えっ?」


「遼がね、別れてくれたの。良かった…」


とりあえずひと安心だ。


「良かったと言うわりにはあまり嬉しそうじゃないな」


「ん…。だって、遼を傷付けてしまったから。中途半端な気持ちで付き合ったから、辛い思いをさせてしまったし」


別れたくても別れてもらえなくて、辛かったけど、別れてもらえても素直に喜ぶことが出来ない。

遼の気持ちを思うと複雑になる。


「そうだな。そう思う桜香の気持ちも分かるよ。でも、片野がどんな形だろうと前向きになったのだから、桜香も進んで行かないと」
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