君の存在が笑顔になる
そして、中学を卒業した私たちは成田空港にいる。


「千太郎、ちゃんといい子にしてるのよ」


「いい子って、そんな小さい子供じゃないよ」


「まあ、迷惑かけないようにな」


楠本家の別れの時を我が家は見守っていた。


千太郎1人だけが日本に残る。おじさんとおばさんは寂しそうだ。


「速水さん、よろしくお願いします」


「うん、しっかり預かったよ。向こうでも頑張れよ」


お父さんとおじさんが握手をする。

お母さんとおばさんは抱き合っていた。


千太郎は私の隣りにいて、手をギュッと握る。

大きくなった千太郎の手は小さかった時と同じように温かかった。
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