山神様にお願い
店長はシートの上に寝転がって帽子を目元にのっけながら言った。どうやら寝るつもりらしい。
「あ、じゃあ俺も、ちょっと一服してきます~!」
ツルさん待って、そう言ってウマ君までポーチを掴んで立ち上がる。山神のメンバーでタバコを吸うのは二十歳になったばかりのウマ君だけなのだ。だから彼は、店では蛍族。
え?ウマ君も?と声を出す前に、二人はさっさと行ってしまった。
「・・・」
え~・・・。私、何したらいいの?人気のない浜辺のシートの上で、寝転がる店長と一緒に置き去りにされてしまったぞ。
・・・うーん。一昨日森で賄いを一緒に食べてから、二人っきりになったことがない。うお、結構・・・気まずい・・・。
店長は鼻から上をワークキャップで隠して、寝ているようだった。
ついつい視線が引き寄せられて、相手が顔を隠しているのをいいことに、思う存分観察した。
つんと先っぽが尖った高い鼻。普段白くてシミひとつない肌は、骨に貼り付くようにピンと張っていて、今はこの強い太陽の攻撃をうけて赤く焼けてしまっていた。
それが優しそうな雰囲気の外見を、やんちゃ坊主みたいに変えている。
たーしか、店長は28歳てツルさんが言ってたなぁ~・・・。彼女とか、居ないのかな。私は眠る店長を見ながらそんな事を考える。
長い体は既に乾いて、砂がついていた。広い肩幅に、綺麗なラインの胸部から腹部と筋肉質の腰。やっぱり水泳かなんかしてたのかな~・・・面接の時にそう思ったことを思い出した。