山神様にお願い
驚いた拍子に一気に出た汗にバタバタと両手で風を送っていたら、帽子の影からこちらを見ている店長の目とバッチリ合った。
―――――――――――う。
「・・・見てたでしょ」
「へっ、はいっ!?」
低い声は微かなのに潮騒に負けずにちゃんと聞こえる。私は焦ったままで聞き返した。何、何ですかっ??
「俺のことみてたでしょ。やたらと視線を感じたぞー」
「みみみみ見てませんっ!」
挙動不審にならないようにと気をつけたら、どもってしまった。そして舌まで噛んだ。・・・ダメだ、失敗、バレバレ~(泣)
ククク・・・と店長が小さく笑う。私は暑い中で冷や汗をかきながら半笑いで座って固まっていた。
ああ・・・誰か助けて~。もうこの際、通りすがりの変な人でもいいから!そう思っていたら、笑うのを止めた店長がボソッと呟いた。
「シカ、いつまで店長って呼ぶの」
「・・・へ?え、いえ、だって・・・店長は店長でしょう?」
何なのだ、いきなり。私は驚いたときの、身を仰け反らせた状態のままの体勢で言う。
「そうだけど、他は皆虎って呼ぶだろ」
「いえ、でも、店長さんですからねえ」