山神様にお願い


 目の前の、海。そのどこまでも広がる、光でいっぱいの光景に向かって、ボソッと言った。

「・・・トイレ」

「「は?」」

 私はサンダルを自己最速ではくと、猛然とダッシュしながら後ろにむかって叫んだ。

「トイレです~!!!」

 砂を撒き散らして走る。格好悪い言い訳だって構わない。とりあえず、どこかで頭を整理しなくては~!!

 すぐに呼吸が上がって足がもつれたけど、何とかコケずに走った。

 うわ~ん、無理無理、この混乱を一体どうやったら落ち着かせられる!?ちょっとおおおお~!!!


 近づいてきた海の家、その前の階段で、ツルさんが座ってサイダーを飲んでいるのが目にうつった。

 彼女も突進してくる私に気付いたらしい。片手を上げてにっこりと笑っている。

「シカちゃーん」

「つ、つ・・・」

 私は全速疾走しながら叫んだ。

「ツルさあああああああああ~んっ!!!!」



 ・・・何とかして。




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