山神様にお願い
興奮して話す私の頭をヨシヨシと撫でて冷たいソーダー水を飲ませ、ツルさんは言った。
「で、未遂でよかった?残念だった?」
「へっ!?」
私はソーダー水の瓶を握り締めたままで固まる。
ツルさんはじーっと私を見ている。あくまでも答えを待つつもりのようだった。
「・・・・」
えーっと・・・・よ、良かったか、残念だったか??そんなこと判らないですよ~!ごちゃごちゃとした頭の中で、私は答えを探してウロウロと彷徨う。
「わ、判りません!!」
あははは~とツルさんが笑った。
「そうなのね、まだ判らないんだ。うーん虎さんちょっとフライングだったのか~」
「・・・いや、ツルさん、フライングって・・・」
どういうこったい、そりゃ!?何が何だか、また混乱してきて私は空いてる片手で頭を抑える。
「周りから見てたらね、シカちゃん、あなた、失恋しても悲観にくれてるように見えなかったのよ」
「え?」
ツルさんは海を見ながらのんびりと話す。階段に座って、太陽の光りを全身に浴びていて、その無防備なスッピンの顔は産毛がキラキラと光っていた。
「そりゃあね、呆然とはしていたし、一つの関係が終ったことのショックは受けているみたいだったけど・・・でも、もう無理だ、というか、号泣するような寂しさは感じてないみたいだったの。身が切り裂かれるような悲しさ、みたいなね」