山神様にお願い
3、秋
・リュウ、暴れる
この夏は、本当に色んなことがあった。
そう思いながら枕に顔を埋める。
小泉君と別れて(というか、振られて)、阪上君から離れて(というか、逃げて)、バイト先の店長にキスされかけた(いまだもって、未遂を喜ぶべきかどうかで悩んでいる)。
男に振られて男から離れて男に食われかけた。
一体、どうしちゃったの私の人生!
ここまで平凡に生きてきて、それぞれのシーンで笑ったり泣いたり、嬉しかったり傷付いたりは勿論あったし、悩みごとだって大きなものから小さなものまで尽きなかった。
だけど、平凡な、当たり前の、普通の毎日の中での話しだった。つまり、家庭だとか友達だとか、習い事の関係だとか。
でも、異性が絡んで自分がわけわからなくなるなんてこと、なかったのだ。私にはほんのりと軽やかでナルシスチックな片思いか、小泉君との明るい恋愛体験しかないのだ。色んな男性が次から次に出てきて、私の身辺でウロウロするなんてことはなかったのだ!
大学4年生の夏、まさか男性絡みで悩んだり泣いたり苦悩したりするとは。
これが大人になるということなんだろうか。だとしたら・・・大人って・・・・。
「・・・結構、面倒くさいのね」
呟けど、一人の部屋。
私は深夜、自分の部屋のベッドに寝転がって、この夏のことを回想していたのだ。