山神様にお願い
声に出して言ってみたら、余りにも自分がバカバカしくて笑えた。あはははは、もう、バーカみたい、私。
私はベッドからむくりと起き上がって、床の上に正座をする。部屋の白い壁をじーっと睨んで、ひたすら繰り返してきた思考の流れをもう一度繰り返す。
つまり・・・・つまり、あれだって店長流のからかいだったんじゃない?そう思うことで夏をすごしてきたのだ。
大人の男の人が、フリーになったばかりのぼーっとした女の子をからかっただけじゃない?って。
ツルさんが言っていたようなことなんかではなくて、私のことは何とも思ってなくて・・・。そうよね、そりゃ店長が私を恋愛対象としてみてるとか、よーく考えたらないよね~、って。
だけど、その考えを面白くなく思ってる自分を部屋の隅っこで発見してしまったのだ。私は憤然と、そのもう一人の自分の影を無視する。どうしても認めたくなかった。
店長が私を好きなわけではない、というのを面白くないと思っているなんて、私は認めない!認めないんだから~!!
今晩の山神様へのお願いはこれだ。
『あの、いけしゃあしゃあとした態度でムカつく店長が何考えてるのか判りません。山神様、お願いします。私に判るように、丁寧に教えて下さい!』
ながーいこと両手をあわせていて、それを龍さんにからかわれた。
「えらく真剣だな、シカ」
「え」
くるりと後ろを振り返ると、男3人が椅子に座ってこっちを見ていた。