山神様にお願い
うまく言えない。だけども、あの寝ぼけた目を擦りながら私を見たときの店長からは、嗜みや気遣いなんて文字が完全に消えているような感じだったのだ。
大好物を目の前にした子供みたい、というか。
ふん、と鼻を鳴らして、店長はコーヒーを飲む。
そしてカップをテーブルに置いてから、にやりと笑って言った。
「俺の寝起きの状態は、確かによく言われるねー」
「はあ」
「我慢出来ない状態になるんだよ、それで今までメンバーには迷惑かけてるからなあ~」
「・・・例えば?」
うん?店長は額をかりかりと指でかいて、天井を見上げる。
「・・・例えば。森で寝ていて、そこを起こされると暴れるとか」
「えっ!?」
「ちょっとイライラを溜めている相手だったんだよね。それで、自分は覚えてないんだけど、喧嘩をふっかけたらしいねー」
「・・・いや、ねーって・・・」
それはダメでしょ。私は呆れて口が開けっ放しになる。
「他にはー・・・あー、モンブランが食べたいって言いまくったらしいとか」
「モンブラン?栗の・・・ケーキですか?」
「そうそう、それね。その当時やたらとはまってたんだよね。それで、ツルが帰りますよ~って俺を起こしに来た時に、モンブランくれなきゃ起きないって言ったらしい」