山神様にお願い
頷くと、ケラケラと軽やかな笑い声。・・・くっそう、何か私ったら、まるで赤子だよ!
恥かしくて膨れる。何か立ち位置からして公平じゃない気がするわ。
存分に楽しんだらしく、満足そうな微笑を見せながら店長が言った。
「それを日本語で、駆け引きというんだよ。シカには彼氏がいたんだろう?今までないの、好きな相手を振り向かせるために、色んなことするでしょ?」
「ないです。だって―――――――」
「元カレが、全部初めて?」
「う・・・は、はい」
嘘をついても仕方がない。それにどうせバレる気がする。そう思って、正直に頷いた。店長は小首を傾げてしげしげと私を見詰める。
「それにもしかして、告白されて付き合ったとか?」
「ええと・・・はい、そうですね。告白されて付き合いました」
おお~、店長がそう言ってベッドに背中を預ける。人の部屋とは思えないほどの寛ぎ方で、一瞬ここは山神の森なのではないかと思ってしまった。ちょっと俺賄い食って寝るわ~っていいそうな感じ・・・。
と、言うか。告白されて付き合ったとか、そんなにわかりやすいものなのだろうか。私はいかにもそんな受身な感じに思えるんだって事?一人でアレコレとそんな風に思っていると、店長がふむ、と呟いた。
「成る程ね。シカは、恋愛をしたことがないんだな」
「え」