山神様にお願い
ツルさんは言っていたのだ、確かに、そう。
『普通は恋って、楽しいだけじゃないでしょう?不安になったり、ドキドキしたり、独占したいって思うから嫉妬も出るし・・・龍さん相手の時はそれがないの。それで、ある時気付くのよ――――――――――これは恋じゃないって』
薄っぺらい感じがするのよって、彼女は言っていた。うまく言えないけどって。
・・・店長が言っているのは、これと同じこと?
私がしていたのは、恋愛みたいなもの?確かに彼氏と彼女だったけど、本気で相手のことを好きではなかった?いやいや、そうではないだろう。
そうではなくて、多分、多分違いとしては・・・。
恋、と、愛、の違い?なのかな?
私は拳を作って膝の上に置いていた。無意識に、それを強く握り締めていたらしい。爪が手のひらに食い込む。
・・・確かに、小泉君相手にそんなに強い気持ちを感じたことはない。いつでも安定した感じで、新しい世界に連れて行ってくれて、私はそれに夢中だった。
だけど、別に小泉君でなくても良かったんじゃない?って聞かれちゃうと・・・・。
そんなことないって、首をふれるだろうか。
振れただろうか。私は、本当に。
呆然として内側に入り込んでしまっていたらしい。まあ、別にいいんだけど、って店長の声が聞こえてきてハッとした。
「え?」