山神様にお願い


 声を出して顔を上げる。

 するとそこには真っ直ぐにこっちを見る夕波店長が。

 大きくてごつごつしてて長い親指を、彼は自分の胸に突き刺した。

「俺と」

 はい?ぺたんと床に座り込んだままで、私はとりあえず繰り返す。

「・・・店長、と?」

「本気の恋をしたらいいんだよ、これからね」

「―――――――――――」



 俺と、本気の恋を――――――――――――



「シカの初恋を俺にちょーだい」


 その言葉が染み渡ったと思った時には、私は死にそうになっていた。ほら、照れくさくて。だってちょっと、信じられない~!!ここは私の小さな部屋なのよーっ!別に、別に、ほら、映画じゃないし!

 照れまくってジタバタしたかった。でも勿論そんなことは出来なかった。こういう時には私をからかう店長が、真面目な顔したままだったからだ。あの軽い口調を大いに裏切る真面目な顔で。

 私はどう反応したらいいかで激しく悩み、結局真っ赤な顔して呟いただけだった。

「・・・・は・・・ええーっと・・・」

 ベッドにもたれて、店長はふかーいため息をはく。

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