山神様にお願い
「いやいや、えーっとじゃなくてさー。どうしてシカはいつでもそんな反応なんだよ~。告白されたんでしょ、前も?そんなに驚くかなー」
「こ、こ、こんな・・・告白はされたことがありません」
「俺もしたことないねー」
「へ?」
ようやく笑って、店長が立ち上がった。よいしょ、と掛け声つきで。そしてその長い体をううーんと伸ばす。
「俺も人を好きになるのは久しぶりだよ。実を言うと、もうちょっと曖昧な気持ちだったんだ。シカを抱きたかったけど、それは単に性欲だけから来てるのかもって自分では思ってた」
「・・・はあ」
だけど、と言葉を続けながら店長は自分の鞄に持ち物を放り込んでいる。どうやら帰る支度をしているらしい、とやっと気付いた。
「抱いたら、かなりしっくり来て驚いたねえ~。シカの中に入っても動いても、どれだけ抱いてもまだ足りないって心底思った。で、気付いたんだよね、思ってたよりちゃんと・・・俺はシカが好きなんだろうって」
大きめのボディバックを肩から下げて、山神のTシャツを着た店長がぺたぺたと玄関に向かって歩く。
振り向いて、笑った。
「シカを他の男に抱かせたくないね。だから、気をつけないとダメだよ」
私は呆然と繰り返す。
「気をつけないと・・・?」
え、何を?混乱した頭で必死に考える。ああ、どうして私ってこんなにバカなんだろう。店長の言ってることが、ちっとも理解出来ない―――――――