山神様にお願い
「マジでそれですよ~、龍さーん。シカ坊から電話があった時の俺の驚愕を、どうやって説明したらいいか判らないくらいですから~」
私達3人、私、ツルさん、ウマ君を前にして90度の礼をしている龍さんを、座敷であぐらをかいて、両肘を膝について顔を押さえて見ている夕波店長が、だら~っと口を出した。
私は首がなるかと思うほどの勢いで思わず振り返る。
はっ!?驚愕だって!?って。驚いたのは私だ。だってアンタ、超平然としてたでしょうがよ!そう思って。確か、あの時店長は、あらあら~って言ったのだ。あらあら~だよ!?
「何、シカ?」
「へっ・・・い、いえいえ、何もないです!」
目の玉だけを動かして私を見た店長が、淡々と聞く。私は慌てて前に向き直った。・・・超ビビる。何か、大声で怒鳴られた方が怖くない、かも・・・・。
体を起こした龍さんが痛そうな顔して目を瞑る。
「ついプッツン来ちゃって。全面的に俺が悪い。オーナーが庇ってくれなかったら前科持ちだった」
「そうですよ~。暴れた龍さんはすっきりしたでしょうけどねえ~」
「や、痛かっただけだな」
「いっそのこと前科者になってくれたら、この店の名前も『山神』から『独房』に変えてあげたのに~」
「・・・それはウケないと思うぞ、虎」
「誰のせいですか」
「申し訳ない!」
「弁償と謝罪は大事ですよー、龍さん。従業員を困らせ、仕事を取り、迷惑をかけ、泣かせた罪はきっちりと償って貰わないとね~」