山神様にお願い
背が高い店長さんよりも更に上に頭がある。この店はちょっと天井が高めなんだな、と気付いた。
「うちの厨房担当、右田龍治さん。元はイタリアンのシェフだったのに、何故かうちにいる変わった人だよ」
変わった人、と紹介された右田さんは下拵えの手を止めて、私に顔を向けた。
少し垂れ目の細い瞳で見られて緊張する。
「宜しく、歓迎するよ、シカちゃん」
シ、シカちゃん??大きな疑問符が頭の中を横切ったけど、とりあえず私は頭を下げた。
「宜しくお願いします!」
口元を右上にくっと上げて、右田さんが店長に言った。
「爽やかな風が、ついに森にきたな、虎」
「そうでしょ、いい感じでしょ。名前も名前だしね。龍さんは気に入ると思った」
男性二人の会話についていけない。わたしはキョトンとしたままで二人の顔を交互に見比べた。
虎?店長さんの名前って、虎なんとかっていうのかな。狐っぽいのに虎とは、ちょっと意外だ・・・。そんなことを思っていたら、さて、と夕波店長は伸びをして言った。
「じゃあ、教えようかな。まずは、挨拶だね」
「はい」
挨拶?あら、何か悪かったのだろうか。私が若干首を捻ると、夕波店長は説明した。