山神様にお願い
私の心象風景は、ムンクの有名なあの絵画そのものだ。あれあれ、ほら、叫びってヤツ。
自分の長い髪をもてあそびながら、ツルさんが店長を見ずに呟いた。
「龍さん、私はオススメしないわ」
「俺も反対ですー」
ウマ君が右手をさっと挙げる。
片眉だけを器用にあげて、龍さんが舌打をする。そして気軽な口調で言った。
「俺だって、これ以上の怪我は勘弁だわー。それにバカにはなりたくねえし・・・。やめとくよ。虎が怖いのは身を持って知っている」
そして一瞬で表情を変えてニタニタ笑い、微笑む店長の肩を両手でバンバン叩いた。
「つーか、虎!!ついにお前が本気になったんだなあ~!」
「みたいだねー。自分でもビックリ~」
「すげーぞ!お前が本気になる相手がバイトで見付かるとは!」
そして一緒に笑いだした。あははは~って。
私は一人、愕然とする。
どーこーがー、笑うところですかっ!??さっきまでの緊張状態はどこへ消えたんですかああああ~っ!?何何、何なのこの宴会的雰囲気!?
今やツルさんやウマ君も一緒に手を叩いて笑っている。私はそれをあんぐりと口をあけたままでぐるりと見回した。