山神様にお願い
「サービス業はね、いついかなる時も、仕事に入る時の挨拶はおはようございます、なんだよ。昼でも、勿論夜でもね。店に入る時は、おはようございます、で宜しくね」
「はい!」
そうなんだ。へえー、と感心する。故郷の叔母のレストランではたまにしか入らなかったから、そういうことは知らなかった。
夕波店長が仕事の流れを説明し始める。私はぐっと集中して、彼の言葉を頭の中に入れて行った。
ぼーっと天井を見詰めて呆けていた。
・・・ああ、疲れた。
今は少しだけ貰った休憩時間だ。時刻は8時半を過ぎたところ。お客さんの入れ替えも落ち着いたし、今からご飯どうぞって言われて、2階の従業員スペースに上がってきたのだ。
とりあえず、と思って椅子の一つに腰掛けたら、それから動けなくなってしまった。
・・・・ここ、和む。
目に入るのは一面の緑色。それってかなり心が落ち着くんだなあ~、などと思っていた。
ここ、2階のこのスペースを、この店の人たちは「森」と呼ぶのが判った。さっき龍さん、つまりキッチンに入っている3連ピアスの右田さんて男性に、賄いのご飯を手渡されながら「森に上がって食べな」と言われて、一瞬判らなかった。