山神様にお願い


 思わず噴出して、私は振り返って睨む。何てことをいうのだ、この人は!しかも、外に出てからなんて性格悪いぞ。

 大股ですぐに私に追いついて、外灯の明りに企んだ笑顔を見せながら店長が言う。

「今日はもう送っていくだけになるし、よく考えたらさ。しばらくシカを弄れないんだよな~・・・。あーあ、カウンターで襲えば良かった~」

「てててて店長、あの、もう少し小声でお願いします!」

「誰もいないでしょ」

 いい加減その照れ屋、何とかならないの~?そんな風に言って、あはははと笑った。

 カウンターで襲うだって・・・。ぶるぶるぶる!私は細部まで想像してしまって激しく頭を振る。追い出すのよ、私!いらない想像を追い出すのよ~!!

「あ、想像してる。ホント面白いねー、シカ坊」

「ほっといて下さい!」

「事細かに説明してみようか?まず、その両手を捕まえるでしょ、それから―――――――」

「やややややめて下さい~っ!!」

 そんなやり取りで、私の部屋まで行った。

 まだ若干不機嫌なままで、私は店長の顔をみずに言う。

「お疲れ様でした!ありがとうございました!」

 彼が苦笑する。そして手で私の顎を軽く撫でた。

「ツンツンすんなよ。ホレ、旅立つ俺にちゅーは?」

「え」


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