山神様にお願い
・八雲の悪戯
恋かも、ではなく、これが恋なんだな、と思ったあとの私は、案外落ち着いていた。
何と言うか、正体不明のざわざわの影が何かが判ったからだった。
つまりこれは、恋愛小説の言うところの、恋わずらいってヤツなのだろうって。
その日は山神が休みの日だったから、家に帰ってからも思う存分に一人であーだこーだと思い悩みまくった。
そして、その次の日はツルさんや店長が言っていた言葉を思い出しては眞子達女友達にメールしまくって、恋愛感情とはなんぞや?を尋ね(しっかりバカにされた)、恋愛小説などを本屋で立ち読みしてみては、一人で真っ赤になっていたりもした。
「うきゃー」
って、一人で何回も言ってしまった。あ、それと、これも。
「あらまー」
どうやら恋をすると、人間は哲学に目覚めるらしい。なんてことまで考えた。
でもいいのだ。過去の偉大な哲学者に聞かなくったって、私は店長を好きになっているらしい。しかも、どっぷりと。うわー、マジで、きゃ~!だった。
今までは未知の体験だ。しかも結構立派な年齢で、それなりの経験も(えーっとつまり、アレとかコレとかの)あるが故に、こんなこと誰にも言えないでしょうがよ!と切れ気味に思ってみたりもした。
確かに、確かに小泉君に対しては抱かなかったイライラがあった。
顔を見たら落ち着くのだろうか、と思って店長の姿を瞼に浮かべてみるのだ。だけど、それはいつでもぼやけてうまくいかなかった。