山神様にお願い


「言わないってば。私は君と結婚も含め何もしません!」

「どうして?」

「は?」

 どうして、だと?何故どうしてなどと聞かれるのだ!私は頭を上げる。阪上君は相変わらずニコニコ笑っている。

「・・・えーっと?・・・いやいや、どうしてって、何よ。しないの。断りに理由を言わなきゃいけないことないでしょ。どうしても本気で言ってるとは思えないのだけど、とにかく私のことは、どうぞ諦めて下さい」

「センセー、また彼氏出来たんだね」

「はっ!?」

 阪上君はカップを持ち上げてコーヒーを飲み干した。

「・・・見たら判ったよ。垢抜けたとか、綺麗になったとか、ああ、彼氏が出来たんだなあ~ってすぐに思ったから」

「・・・・」

 笑顔を消して、阪上君は真面目な表情で言った。

「大学の同級生とは別れたんだよね?それで、一人になって寂しくて、ボロボロの、身なりにも構わない汚い女になってろって念じてた。僕のことを振ったのを悔やんでいればいいって思ってたんだ。顔を見てみて、酷い女になってれば指差して笑ってやろうって思ってたんだよ」

 き、汚い女って・・・。それを念じていたってところに愕然とした。淡々と話す阪上君が、本当にそう思ってたのだろうなあと思ったからだ。指差して笑われるところだったのか、私は。ううん~・・・それの方が良かったのかどうか、意見がわかれそうなところよね。


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