山神様にお願い
「あれ、センセー?」
「化粧室!!」
憤然としてトイレに向かう。
別に化粧を直す必要などないのだ。だけど、急に現れたあの子に対応するための心の準備をしにいく必要があった。
くっそ~!!絶対負けないんだから。あの子に負けたら毎日がこんな戦争に!それはごめんよ~!!
冷たい水で手を洗ってリップクリームを塗りなおし、深呼吸をした。
そして鏡の中の自分に向かって小声で言い聞かせる。
―――――――――席に戻って、さようならと言い、速やかに帰るのよ、ひばり!席に戻ってさようならを言い速やかに帰る!速やかに帰る!!これ以上余計な情報は、あの子には与えないこと!
よし!と拳を作って気合をいれ、私はカツカツと戦場に戻る。
意を決して彼の前の席に座り、阪上君を睨みつけた。
「悪いけど、私は帰――――――――」
「で、阪上家の嫁に来ない?」
「行かないってば~!!」
ドン!と思わずテーブルを叩いてしまった。店の奥からホール係りの人が顔を出してこちらを伺ったのに気付いて赤面する。
・・・・やだやだ、いきなり彼のペースに・・・。もう~!!
前でケラケラケラと軽く笑い声を上げて、阪上君が言った。