山神様にお願い
わなわなと震えながら人のスマホを握り締めて立っている私を、龍さんとウマ君がこれはヤバイと思ったらしく、懸命に宥めて慰めてくれる。
「ま、ほらシカ!大丈夫だって、訂正きくし」
「そうですよシカさん、皆ちゃんと判ってくれますよ。相手のこと書いてないし」
「だってだってだって、結婚ですよおおおおおお~っ!?」
酷いでしょ、これは酷いでしょう~っ!!
私は取り敢えず飲め!と出されたお猪口一杯の日本酒を一気に煽って、求められた事情の説明を何とかする。
「は?」
そう言って、更に眉間の皺を深くして龍さんが言う。
「カテキョの生徒がした?」
「・・・えらく悪質な悪戯っすよね」
二人とも、くっきりと眉間に皺を寄せている。私はそんなところじゃなかった。もう怒りか悲しさか恥かしさかよく判らない混沌とした世界にいきなり放り込まれた状態で、ぐらぐらと視界が揺れていた。
「絶対そうです~!もう、もう、本当にあの悪魔、信じられない~!!ううううう~っ!!」
ついに涙が出てきて私はタオルに顔面を埋める。
酷い酷い酷い~!こんなことするとは!何て子なのよ、本当に~!!実家の両親、大学の友人、知人、大学に入学してから今まで係わりがあってメルアドを知っている全ての人間に、メールが行ったと思ってまず間違いない。