山神様にお願い
「・・・とりあえず、食べよ」
頂きます、と手を合わせてお箸をご飯に突き立てていたら、トントントン、と階段を上がる音がしたから顔を上げた。
下の店から聞こえるざわめきを後ろに背負って、女の子が階段を上がってきた。
ばっちり目があって、私は急いでお箸をおいて頭を下げる。
「あ、こ、こんばんは!」
私の挨拶に、彼女はにっこり笑った。
「おはようございます。今日入った新人さんですよね、えーっと・・・鹿さん」
あら、名前まで?私はちょっと驚く。鹿、で終わりじゃないんだけどな、と思いながら。
そうだ、そして、店での挨拶はいつでも、おはようございます、なんだったっけ。
「はい、鹿倉です!宜しくお願いします!」
はい、と彼女は笑顔を返しながら部屋に入ってくる。そして椅子の一つに鞄をおいて、着ていたジャケットを脱いだ。
下はここの制服のTシャツ。
はあ、成る程ね。着てきて、脱ぐだけにしてるのか!私は一人で頷いた。
「私は鶴名といいます~。鶴名瞳です。25歳のフリーターです」
明るい笑顔にほっとする。
すらりと背が高くて卵型の顔をしていて、頭の高いところでポニーテールにしている女の人だった。