山神様にお願い


 彼女がニコニコとしていて私の緊張もすんなりと解ける。

「私は大学の4回生で、21歳です」

 そう言うと、時計などのアクセサリーを外しながら、彼女は言った。

「うん、大学生だって聞いたよ~。私のことはツルって呼んでね。ここでは皆動物名で呼ばれるのよ。それが採用の選択理由だってのが、本当変な店よね~」

 ・・・うん?

 私は首を傾げる。・・・選択理由、ですと?

 ツルだといった彼女は首を傾げた私に気付いて、微妙な表情で言った。

「あ、まだ聞いてなかったのね。雇われた理由よ、ここでは、名前が大事なの」

「はあ」

「名前に動物名が入ってる人に優先権があるわけよ」

「・・・はあ?」

 名前に何が入っていたら、優先されるって?私はバタバタと瞬きをした。何か聞き逃した?いやいや、そんなことはないはずだ。あれ?でも私、この人の言ってること、意味不明―――――――・・・

 彼女はテキパキと就業準備をしながら続ける。

「店長は名前が虎太郎っていって、コタロウのコの所に虎の字が入ってるからトラって呼ばれてる。で、板さんの右田さんが龍治でリュウさんでしょ、そして私が鶴名でツル」

 ――――――――マジですか、それ?私は唖然とした。口は開きっ放しだったはずだ。だって、そんな理由ってありますか~?



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