山神様にお願い
やったー、って言うんだ?その人・・・。何か、組長の娘っていう恐ろしげなイメージから、ストーカー被害にあってる可哀想で可憐なイメージから、どんどん変わるんですけど・・・。どんな人なんだろ、一体。
「母達もこればっかりは仕方ないよねってね。まあ娘みたいになってるから、それはそれでここを実家だと思って帰ってきてね、って言ってた」
結構ドライなんだよ、母親は、そう言って店長はけらけらと笑う。私は一緒に笑うべきなのか激しく悩んだあとで、取り敢えず真面目な顔を維持していた。
「・・・で。片山さんに去年、末期のガンが見付かったんだよ」
話す店長の顔から、笑顔が消えた。
私も無意識に姿勢を正す。
「もう手術はしないと本人が決めて、ホスピスに入っていたんだ。母さんと、俺と彼女で交代で世話をしてた。・・・あの人には自分の家族は元ダンナのヤクザしかいないんだ。だから息子のようになってた俺と、娘のようになってたその彼女とで、遺品を整理していて、それが・・・まあ、大変でねえ~」
「あ・・・ええと、お疲れ様でした」
「うん。で、二人でちゃんと話して、お互いに好きな人がいるしさっさと解消しようってなって、もう組とは関係ないっていっても一応今の組長と幹部には婚約解消しましたって言いに行かなきゃならなくて。でないと不義になって、俺しめられちゃうからねえ~」
あははは~と彼は笑う。目を細めて、楽しそうだった。私は思わず突っ込んでしまう。
「そ、そこ笑うところじゃないのでは、店長?!」
「正座とか久しぶりにしたら足が痺れてやばかった~。総会で皆の前で転ぶところだった。あははは~」