山神様にお願い


 襲うのか!!私は身を仰け反らして叫んだ。

「何てことをーっ!!」

 店長はその反応を見て、目の前で豪快に笑っている。手まで叩いて笑っている。ちょっとちょっと、ヤキモチとか妬かないんですか、あなたは!?

「私が襲われても店長は平気なんですねっ!」

 ムカついた私がそう言うと、まだ笑った顔のままで店長はこっちを見た。目の玉だけを動かして。その不気味さに、私は思わず動けなくなる。

「何いってんの。許すわけないでしょ~。そんなことになったら、その子を殺しちゃうよ、俺」


 ・・・・・ひいいいいいいいいい~っ!!


 そ、そんな怖い台詞を笑いながら言わないで下さい!引きつっただけでそう口に出来なかった私はヘタレだ。

「え・・・ええと・・・じゃあ、む、無視する方向で・・・」

 何とかそう言うと、少しの間真面目な顔で店長が何やら考え込んだ。

 私は引きつりを抑えてそれを見る。滅多にない真面目な顔をして、どこかを見詰めて考えこんでいる模様だ。

「・・・あのー店長?」

「ちょっと待って」

「はい、すみません・・・」

 その後もしばらく無言の思考タイムが続く。私はやることがなくて、仕方なく二人のコーヒーカップを流しに運び、それを洗ったりしていた。


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